昨年度から水海道さくら病院で実施している認知症への取り組みについて、連載で紹介しています。
前回は、現場の認知症ケア向上のための研修として実施した「AR体験」について紹介しました。今回は、AR体験後に実施した「座学研修」についてご紹介します。
座学研修について
AR体験では、認知症高齢者が感じているとされる世界観を体験し、これまでの自身のケアや環境面の振り返りをおこないました。
座学研修は、AR体験で得た気づきをもとに、実際どのような認知症ケアが必要なのか、より深い理解を得ることを目的に実施しました。
① 認知症ケアの基本知識
座学研修では、まず、認知症ケアの概念と実践的な方法について理解するために、せん妄ケア、認知症ケア、認知症にやさしいデザインの3つのテーマについて、動画を通して学びました。
「認知症ケア」なのになぜ「せん妄ケア」の知識が必要なのでしょうか。
せん妄は、時間や場所が急に分からなくなる、注意力や思考力が低下するなどの症状が起こる一種の意識精神障害で、急性期に入院する高齢者には高いリスクがあるとされます。認知症と混合されることも多く、入院患者に不穏などの異変がみられた場合には、せん妄症状なのか、認知症による症状なのかの判別が必要となります。そのため、今回は、認知症ケアだけではなく、せん妄の原因や予防、対応方法等についても理解を深めました。
<座学研修の様子>
会議室での研修会だけではなく、時間の都合がつかない職員や自主学習を希望する職員向けに、動画のWEB配信サイトを活用した研修体制も整えました。
② 個人ワークによる実践への応用
動画を通して認知症ケアに関する理解を深めたあとには、個別ワークも実施しました。
個別ワークは、「認知症患者対応に対する事例検討」と「自病棟への応用についての検討」の2つのテーマについて個々で取り組みました。日常的なケアの中でみられる、認知症に気づくべきポイントや、病棟で起こり得る問題とその対応について考えるきっかけとなったのではないかと思います。
職員の反応
研修に参加した職員からは、認知症ケアに対する関心が高まった、これまでのケアの振り返りになった、今後のケアに活かしたいといった声が聞かれました。
最後に、今回の個人ワークで各自が考えた「今後、自分や自分の病棟で実践できること」について一部抜粋してご紹介します。
① コミュニケーション
・ 患者の視野の中に入って(真正面から)声をかける
・ 静かで落ち着いた環境で話す
・ 会話はゆっくり、はっきり、話題は短く、具体的に
② 環境
・ 落ち着いて過ごせるよう、物は少なく、整える
・ 導線の妨げになる障害物は取り除く
③ 観察・ケア
・ 身体状態を観察し、疼痛がある際は取り除けるよう対応する
・ 食事状況や体重の変化から、食思低下の原因に合わせて対応する
④ 情報共有
・ 患者の状態・状況、家族の理解、今後の方向性や希望を看護師間、多職種と情報共有し、連携する
・ 他職種スタッフにも、本人が表出しきれない苦痛につながる症状のきっかけについて情報を得られるようヒアリングしていく
学びを実践にうつすためには、日々の意識づけと職員間の連携がとても重要です。
水海道さくら病院では、今年度、認知症ケアを現場に落とし込むための取組みを継続して実施していきます。
次回は、認知症にやさしいデザインの導入についてご紹介します。
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